Iddings Deep Colorは過去50年以上にわたって、背景画家に愛用され続けてきました。 しかし、Iddings Deep Colorを使いこなすには、ちょっとしたコツがいります。

塗料は、顔料、結合剤、媒質の3つの要素で構成されています。 顔料とは、お察しの通り、着色剤のことです。 媒質とは、顔料と結合剤を適切に混合するためのものです。 Rosco塗料の媒質は水です。 結合剤とは、名前が示すように、塗料が被塗装面にどの程度よく接着するか、乾燥したときに塗料がどの程度の耐久性を有しているか、また、時間が経過するにつれて乾燥したコーティングをどの程度柔軟な状態に維持させるかを制御するものです。 Iddings Deep Color製品群ではカゼイン結合剤が使用されています。 Iddings Deep Colorに伴う問題の大部分は、このカゼイン結合剤に起因しています。

カゼインは、過去数百年にわたって塗料システムに使用されている結合剤です。 これは、現代的な塗料成分である無機材料のラテックスやビニールやアクリルと異なり、牛乳に含まれるたんぱく質です。

カゼイン結合剤の長所：

• Iddings Deep Colorは、入手可能な塗料の中で最もつやや反射が少ない製品です。
• モスリン、スクリム、キャンバスなど多孔性表面に対する接着力が優れており、極めて柔軟です。
• Iddings Deep Colorは水を加えて再溶解させることができます。

カゼイン結合剤の短所：

無孔性表面に対する適切な接着力を確保するには、カゼイン結合剤に透明なアクリルを添加する必要があります。 カゼインは有機物なので、時間の経過とともに腐食したり、濡れて汚染された用具や水源を介してバクテリアが侵入することがあります。 缶の中に入っている濃縮塗料よりも、希釈した塗料の方が早く腐食します。

背景画家が遭遇する大部分の問題は、Iddings Deep Colorの再湿潤性や腐食に起因しています。

Iddings Deep Colorは柔軟な物体の塗装に適しています。 完全につや消し仕上げとなり、水滴がすなおに広がります。 顔料濃度が高いため不透明性に優れています。 Iddings Deep Colorの接着力を高めるにはRosco Clear Acrylic Glazeを添加してください。

再溶解とは、塗料層が乾燥後にも水と反応することを意味します。 すなわち、乾燥したIddings Deep Colorの上に水や水分を含むもの (触れた塗料など) を落とすと、乾燥塗料が再溶解して濡れた塗料に復帰します。 乾燥した青いIddings Deep Colorの層の上に濡れた黄色の塗料を塗布すると、黄色の塗料で青い塗料が再溶解するので、2色が混合して緑色になります。

多くの背景画家は、Iddings Deep Colorのこの特性を有効に利用し、塗装テクニックを駆使して、濡れ混合色効果を出しています。

映画やテレビでは、背景画家は、Iddings Deep Colorで、撮影後に元通りに修復しなければならない大道具や家具を塗装することがあります。 Iddings Deep Colorで塗装すると、適切な方法でこうした大道具を清浄な水で洗浄したときに、元の状態に復帰させることができます。 それと同様に、Iddings Deep Colorを使用して、人工的に洗練された床面処理を行なうこともできます。この場合も塗装を簡単に除去することができます。 水ホースと床面バフ研磨機を使用して、元通りの状態に復帰させることができます。 これは、床面の塗装に対する制約の大きいテレビスタジオで、特に役立ちます。

ところで、再溶解させたくない場合に、簡単に解決できる方法があります。 Iddings Deep ColorにRosco Clear Acrylic Glaze (つや消しまたはつやあり) を直接添加 (1ガロンにおよそ1カップを添加) すると、カゼイン結合剤が安定化し、乾燥後に塗料が再溶解しなくなります。 これは、特に、薄い上塗り塗料を何回も重ねる上で有効です。また、上からClear Acrylic Glazeを2、3回軽くコーティングして塗装処理を分離して塗料をシールすることもできます。

腐食したカゼインの匂いに閉口したことがある方は、次に説明する作業をおろそかにしないでください。 カゼインは有機物です。 長持ちするように保存剤を添加した牛乳のように、慎重に保存し適切な環境管理を行なうことは、Iddings Deep Colorの貯蔵寿命を延ばす上で役立つ方法です。

Iddings Deep Colorには、腐食を早めないための保存剤として強力な抗菌剤が含まれています。 最近まで、水性塗料に使用されていた一般的で強力な保存剤は、水銀ベースの殺菌剤でした。 数年前に、環境保護協会によって塗料・コーティング業界に対する規則を大幅に改定され、水銀ベースの殺菌剤の使用が禁止されました。 これは健康面や安全性の面から見ると適切な処置ですが、大部分の殺菌剤は水銀ベースの殺菌剤ほど強力ではないため、カゼイン塗料が腐食しやすくなる結果となりました。 現在、Roscoでは、Iddings Deep Colorの製造に、水銀ベースではない殺菌剤のうちで最も強力な殺菌剤を使用しています。

殺菌剤を変更したことによるもう1つの弊害は、現在使用している保存剤は、従来の保存剤が持っていた防臭特性の一部を有していないことです。 特定の顔料、特に青系統や黒系統は、じゃこうに似た土臭い匂いを有しています。 必ずしも好ましい匂いではありませんが、腐食したカゼインの匂いよりはましです。 これを補正すべく、一部のIddings Deep Colorには、匂い消しとしてパイン油タイプの化合物が添加されています。

Iddings Deep Colorの寿命を延ばすために、いくつかの方策があります。 前述したようにカゼインは牛乳ベースのたんぱく質です。 ですから、牛乳の防腐方法を、Iddings Deep Colorの保存に応用することができます。

塗料の保管場所の温度を正確に管理することは困難ですが、保存場所として、乾燥した冷暗所が最適です。 できれば、70°F (21℃) 以下で55°F (13℃) 以上の場所で保管してください。

Iddings Deep Colorは濃縮されています。 今日塗装されるプロジェクトには1クオートほどの塗料しか必要とされないと仮定しましょう。 次の週の塗装には1パイントほど必要であるとしましょう。この場合、直ちに使用する分のみを希釈してください。 缶から濃縮塗料の一部を取り出し、容器の蓋をしっかりと密閉し、取り出した塗料のみに水を添加します。 水中のバクテリアによってカゼインが汚染され、塗料が腐食します。

また、水によって、塗料中の保存剤のバランスが崩れます。 保存剤は、塗料中の固体の量に比例します。 希釈された塗料では、塗料の総量に対する保存剤の量が減少するため、時間が経過するとともに腐食する可能性が高くなります。 塗料が乾燥して水分が蒸発すると、このバランスが元通りに復帰し、保存剤が乾燥塗料の腐食を防止するようになります。 濡れた状態の塗料が腐食したら、その塗料を使用することはできません。塗装面の乾燥後も匂いが拡散することを覚えておいてください。 匂いは抜けず、それを除去する方法はありません。

Iddings Deep Colorの貯蔵寿命を延ばすもうひとつの方法は、缶の中に、直接、パイン油などの市販の抗菌剤を添加することです。 塗料の上に抗菌剤の液を添加し、そのままの状態に保持します。 塗料の上に抗菌剤の液を乗せると空気汚染の可能性が減少します。残りの塗料を使用する際には、この抗菌剤を流出させればよいのです。

できません！ 腐食したDeep Colorが乾燥すると匂いが消えると思う方は多いようです。 しかし、実際は消えません。 匂いは永久に残ります。

はい。 塗料を室温に戻せば、通常通りに使用することができます。 ただ、多少希釈する必要があるかもしれません。

貯蔵寿命は種々の因子で大幅に変化しますが、ある程度の目安はあります。 未開封の状態で温度管理されている場所で保管した場合、貯蔵寿命はおよそ24ヶ月です。 開缶後に水で希釈せず、適切な方法で缶を再密閉した場合、6～12ヶ月の貯蔵寿命と考えられます。 希釈した塗料の場合は最高で3ヶ月程度の寿命がありますが、様々な因子によって長くも短くもなります。 容器から塗料をすくい出す際には、必ず清浄で乾燥した用具を使用してください。 こうすれば、塗料中にバクテリアが侵入しなくなります。

Iddings Deep Colorは使いやすい非常に優れた塗料で、優れた背景画を作成することができます。 注意して取り扱えば、問題も発生しません。 本項の注意事項に従うと、大部分の問題の発生を防止することができます。

もちろん、腐食したカゼインに関する別の解決策は、Rosco SupersaturatedやOff-Broadwayなどのアクリル系塗料に切り替えることです。 こうした柔軟性の高いビニールアクリル結合剤は優れた塗装品質を提供し、腐食しません。 他のRosco Scenic製品の詳細についてはRoscoまでお問合せください。